(1) 日本で起業したい!
留学後も日本に残って起業したい、あるいは一度帰国したものの、やっぱり日本に戻って起業したい。「スタートアップビザ」とは、そういう志を持った外国人の方々が利用できる特例(優遇)制度です。
日本の大学等で学んだ知識や技術を活かした起業を考えたことがある人は、この制度について聞いたことがあるのではないでしょうか。
(2) 「スタートアップビザ」の制度は二つある?
そこで、インターネットでこのビザについて調べてみると、「外国人起業活動促進事業」と「外国人創業活動促進事業」のふたつが出てきます。一字が違うだけですが、何が違うのでしょうか。以下、それぞれについて説明します。
ところで、スタートアップビザに関するサイトはたくさんありますが、JETRO(日本貿易振興機構)のサイトが分かりやすいと思います。
(3) 「外国人起業活動促進事業」
経済産業省が創設した制度です。地方自治体等が、外国人の起業活動を支援する計画を策定し、経産省がそれを認定します。そして、認定を受けた地方自治体等に、起業を志す外国人が起業準備の計画を提出します。
その起業準備計画が認められると、起業準備のための1年間の在留許可と (5) で説明する特例(優遇)措置が受けられます。さらにこの1年の間、その地方自治体等から起業活動の支援を受けられます。
以後、この制度を「経産省のスタートアップビザ」と呼ぶことにしましょう。
(4) 「外国人創業活動促進事業」
内閣府による国家戦略特別区域に関する制度で、正式には「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」といいます。内閣府によって、経済発展を重点的に促進するべき地区に認定された特別区域(県や市、以下、特区と略す)の域内で、外国人の創業活動を支援します。
創業を志す外国人が、内閣府から特区の認定を受けた地方自治体に創業計画を提出します。その自治体が計画を認定すると、起業準備のための6か月の在留許可と (5) で説明する特例(優遇)措置が受けられます。また、この期間中、その地方自治体から起業活動の支援を受けられます。
以後、この制度を「特区スタートアップビザ」と呼ぶことにしましょう。
(5) 在留資格「経営・管理」の要件充足に関する猶予期間付与
起業する、創業するとは、会社の経営者になることですから、「経営・管理」の在留資格が必要です。本来、「経営・管理」の在留資格を取得するには、次の二つの要件を在留資格申請時に満たしていなければなりません。
(a) ちゃんとした事務所を持つ(事業を行うに適切で独立したスペース、中長期の賃貸借契約など)
(b) 常勤2名以上の雇用、又は500万円以上の投資
これらの要件を最初から満たすことは、現実的には、日本に強力なパートナーがいないとできません。しかし、上記 (3)「経産省のスタートアップビザ」、 (4) 「特区スタートアップビザ」のどちらの制度でも、これらの要件を満たすために一定の猶予期間(1年あるいは6か月)を付与してくれます。
日本に強力なパートナーがいなくても、この猶予期間を使って、外国人起業家が自分でこれら起業の準備をできるようにすることが、両方のスタートアップビザの主要なポイントなのです。
◎ふたつの「スタートアップビザ」の中身の比較や申請に必要な書類などについて、次の2つの投稿で説明していきます。