外国人起業家に付与される在留資格について
前回の投稿「「スタートアップビザ」超入門~その2」では、「経産省のスタートアップビザ」と国家戦略特別区域の制度に基づく「特区スタートアップビザ」の違いについて説明しました。今回の投稿では、「スタートアップビザ」を活用して起業の準備を行う外国人に対して、出入国在留管理庁(入管)は、どのような在留資格を与えるかを見ていきましょう。
(1) 起業準備の在留資格は「スタートアップビザ」によって違う
どちらの「スタートアップビザ」制度を利用して起業しても、最終的には、その外国人は在留資格「経営・管理」を取得して、中長期的に事業に専念することになります。しかし、どちらの「スタートアップ」制度を利用するかによって、起業準備の段階で付与される在留資格は異なります。
「経産省のスタートアップビザ」で起業準備を始める場合は、「特定活動」(告示第44号)という在留資格で1年間の在留を許可されます。
「特区スタートアップビザ」で起業準備を始める場合は、最初から「経営・管理」の在留資格が付与されますが、有効期間は6か月だけです。この短期間の「経営・管理」資格は、いわば、仮免許のようなものと考えればよいでしょう。
(2) 起業準備段階にしなければならないこと
上記の、いずれにしてもテンポラリーな在留資格を取得した外国人起業家は、許与された期間内に、在留資格「経営・管理」の要件である次の二つの事項を完了しなければなりません。
(a) 事業を行うために適当な事務所を持つ(独立したスペース、中長期の賃貸借契約)
(b) 常勤2名以上の雇用、又は500万円以上の投資
これらの要件を満たしておかなければ、どんなに事業自体が順調に立ち上がっても、在留資格「経営・管理」を取得して、日本に在留することができなくなってしまします。
さて、次は、外国人起業家が最終的に取得することになる在留資格「経営・管理」の中身について、少し見ていきましょう。
(3) 一つの会社に経営者や管理者は何人必要か?
そもそも、この在留資格は、大きな会社の経営者や管理者ほど取得しやすい建て付けになっています。大企業と中小企業は平等には扱われていません。
一般的に、「経営」の方では、大企業の社長、副社長、取締役、監査役などの役員が該当すると想定されています。一つの会社に「経営」を行う役員が複数いるのは、ある程度の規模以上の会社です。
また、「管理」の方は、実際に事業を「管理」した経験があること、つまり組織を動かせるプロであることが要件になっており、通常は、多数の部下を持つ大企業の工場長や支店長、部長クラス以上が想定されています。
もし友人と二人で起業を計画しているなら、スタートアップしたばかりの小規模の会社に経営者が二人も必要なのか入管に問われます。また、友人の方を「管理」の資格で申請するには、その友人は上述の経験を有しているか問われます。そして、一人の人間が「管理」に専念しなければならないほどの管理業務があるのか問われます。
実際の在留資格許可申請に当たっては、これらの点をよく事前によく考慮しておく必要があります。
(4) 小さい会社、新しい会社ほどハードルが高い
さらに、ある会社が「技術・人文知識・国際業務」*などの在留資格で外国人を雇用する場合、現実的には、会社の規模が小さいほど、在留資格を取得するための難易度が高まります。小さい会社ほど、新たに外国人を雇用するに当たって、会社の安定性、将来性を証明する書類をたくさん提出しなければなりません。
*大学卒業程度の技術や法律、経済学などの知識を有する、いわゆるホワイトカラーの従業員を想定した在留資格です。別の機会に投稿で説明します。詳しい情報をお求めの場合は、当事務所にお問い合わせください。
そのため、外国人起業家が、設立したばかりの、まだ小さな会社に、同国人を採用したいような場合には、詳細な説明を求められますので注意してください。
一方、「スタートアップビザ」制度を利用して起業した場合、起業後も地方自治体が継続してサポートしてくれます。したがって、このようなケースでは、地方自治体からどのようなサポートが得られるかを確認することも必要でしょう。
◎「スタートアップビザ」超入門(計3回)はこれで終了します。多少はお役に立てましたでしょうか? これらの投稿を読んでいただいて、何か質問がありましたら、簡単なことでも構いませんので、ご遠慮なく質問してください。
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