「永住許可」要点整理~その1

在留資格「永住者」は、日本人と結婚して日本で生活している、日本で安定した事業を長年継続して行っている、その他、これからもずっと日本に居住し続けることに相当な理由がある外国人の方々のための在留資格です。

今回は、在留資格「永住者」取得の要件を概括し、さらに、現在持っている在留資格によって取得のための要件が異なることなどについて説明します。

(1) 永住許可取得のハードルは高い

在留資格「永住者」を取得できれば、在留期間が無期限になり、在留活動にも制限がかかりません。つまり、「永住者」の資格を取ってしまえば、それ以後、職業を変えたり、仕事を辞めて無職になったとしても、別の在留資格を取得しなければならないという心配はありません。

それゆえに、在留資格「永住者」許可申請に対する審査は、将来問題を起こさない限り、その外国人に関して出入国在留管理局(入管)が行う実質的に最後の審査*になるため、特別に慎重に行われます。審査には通常、数か月はかかります。

*ただし、在留カードの更新や再入国許可の手続き等は、永住許可取得後も必要です。

出入国在留管理庁は、審査基準の概要を「永住許可に関するガイドライン」にまとめて公開しています。主な審査基準は次のとおりです。

(a) 素行が善良であること

(b) 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

(c) 原則として、引き続き10年以上日本に在留していること

(d) 公的義務(納税、年金や社会保険加入など)を適正に履行していること

(e) 現に有している在留資格について、最長の(3年以上の)在留期間が許可されていること

このうち (c) については、下記 (3) で説明します。

いずれにしても、これだけを見る限り、それほどハードルが高いとは思えないかもしれません。しかし、入管の審査官は、これらの基準を満たしているか否かに関して、(言葉は悪いですが)「重箱の隅を突く」ための分厚いマニュアルを持っていて、いろいろな角度から申請者に質問し、証拠の提出を求めてきます。

入管は、たんに提出された書類を調べるだけではなく、必要に応じて自ら調査も行いますので、些細なことであっても、虚偽はもちろん、いい加減な記載は絶対にしないようにしましょう。

(2) 難民などの要保護対象者に対する永住許可の要件緩和

なお、出入国管理及び難民認定法(入管法)第22条が永住許可の要件について定めていますが、2023年の法改正で、同条に「国連高等難民弁務官事務所 (UNHCR) その他の国際機関が保護の必要性を認めた者」に対して、上記 (b) の要件は考慮されないことが明記されました。

生命や身体の危険を感じて、身一つで逃げてきた人々が、十分なお金を持っていることは通常、期待できないと思われますので、今回の法改正は一歩前進だと思います。

(3) 永住許可の申請ができるまでの在留期間は、外国人によって大きく違う

永住許可を取得するための要件のひとつに、上記のとおり、「原則として、引き続き10年以上本邦に在留していること」があります。しかし、現実は、高学歴・高収入の人ほど早く永住許可を申請する権利を得ることができます。残念ながら、すべての在留外国人が平等に扱われるわけではありません。

具体的には、次の資格を有し、特定の要件を満たす外国人は、在留を開始してからかなり早い段階で永住許可申請をすることができます。

在留資格「高度専門職」のポイント計算*で80点以上を有する外国人 1年

・在留資格「高度専門職」のポイント計算で70点以上を有する外国人 3年

・外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者 5年

*ポイント計算とは、在留資格「高度専門職」の基準適合性(合格基準のようなもの)を客観的に数値で測る仕組みです。このポイント計算表にはたくさんの評価項目があり、例えば、博士号を取得していれば何点、世界大学ランキング上位校を卒業していれば何点、年収がいくら以上なら何点・・と、該当する項目のポイントをどんどん足していきます。そして、その合計点によって、その外国人の日本への貢献度を測るというものです。

在留資格「介護」で来日し、毎日毎日、汗水流して高齢者や障害者の世話をしても、10年経たなければ永住許可の申請は出来ません。しかし、「高度専門職」の資格を持って在留すれば、たった1年か3年で永住資格を申請できます。職業による、この大きな差には疑問を感じざるを得ませんが、現状はこのようになっています。将来の改善に期待したいと思います。

(4) 個人の情状や人権に配慮した在留期間要件の短縮もある

一方、個々人の状況(社会におけるポジション)を考慮して、永住許可の申請ができるまでの期間を10年より短くしている場合もあります。具体的には次のようなケースです。

・日本人と結婚して、真実の婚姻が3年以上継続し、1年以上日本に在留している 1年

「定住者」*の在留資格で日本に在留している 5年

・難民**または補完的保護対象者***の認定を受けた者 5年

*「定住者」とは、日系人、定住難民、そのほか法務大臣が特別な理由を考慮し在留期間を指定して居住を認める者です。

**難民とは、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見によって迫害を受ける恐れがあるため国籍国に戻れない人々を指します。正確な定義は、国連の難民条約に規定されていますので、参照してください。

***補完的保護対象者とは、難民に該当する要件(上記5つの理由)以外の理由で、迫害を受ける恐れがあるため国籍国に戻れない人々を指します。例えば、自国が戦争の渦中にあって、そこから逃れてきた人々などが該当します。正確な定義は、入管法第2条3号の2を参照してください。

◎次の投稿では、永住資格の注意点、特に近い将来施行される予定の永住許可取消し制度について説明します。

 

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