前回の投稿では、永住許可の取得の困難さ、何年日本に在留したら永住許可の申請ができるようになるか、そして、その年数は、外国人が現在持っている在留資格や学歴、収入などによって異なることなどについて説明しました。詳しくは、「「永住資格」要点整理~その1」を参照してください。
今回の投稿では、在留資格「永住者」は一般に思われているほど安定した資格ではないという点、近い将来施行される予定の永住許可取消し制度などについて説明します。
(1) 永住許可は一般に思われているほど安定した、また優遇されている資格ではない
永住許可を取得していても、入管法の違反により「永住資格」が取り消され、また退去強制(強制送還)の対象になってしまうことがあります。この点、他の有期の在留資格と比較して、「永住者」の資格が特別に保護されているわけではありません。
たしかに、重罪を犯した場合などを除き、永住許可を取っていれば退去強制から除外され得る可能性は高くなります。しかし、この場合でも在留特別許可の制度によって有期の在留資格に変更されてしまい、「永住資格」を維持できるとは限りません。
話は変わりますが、
「永住者」の資格を取得した外国人は、もちろん、配偶者や子を本国から呼び寄せることはできます。しかし、親や家事使用人の呼び寄せは原則として認められていません。在留資格「特定活動」(告示外)を使って許可申請することは可能ですが、ハードルはかなり高いです。
一方、在留資格「高度専門職」には優遇措置として、一定の条件は付されるものの、親や家事使用人の呼び寄せが認められています。親の呼び寄せが許される一定の条件とは、例えば、世話が必要な7歳未満の子がいる場合などです。
しかし、もっと切実な問題は、日本で一緒に住んでいる小さな子の世話というより、本国で一人暮らしをしている老親の世話をどうするか、ではないでしょうか。
「永住者」の資格を取って日本で働いていれば、将来本国に戻る予定はなく、また、頻繁に老親を訪問する時間的余裕もないケースが多いと思われます。できれば老親を日本に連れてきて一緒に住みたいと願うのは人情ですが、こうした場合に、永住資格を持っていることが親の呼び寄せにおいて有利になるという規定は存在しません。
※「老親の呼び寄せ(連れ親)」は重要な問題ですので、また別の投稿で詳しく説明しようと思います。
(2) 永住資格取消し基準の新設
今年2024年6月14日の法改正(公布日から3年以内に施行)によって、①入管法の規定する義務を遵守しない場合、②公租公課(税金や社会保険料など)を支払わない場合、永住資格が取り消され得ることがはっきり明文化されました。
①は、在留カードの携行をうっかり忘れたような軽微な違反、「うっかりミス」も含まれます。
②は、病気のために失業し収入が無くなってしまった結果として、納税義務が果たせなくなったような、本人がコントロールできない理由によっても「永住資格」が取り消されてしまう可能性があります。
急速な少子高齢化による深刻な労働力不足を補うために、日本政府は、途上国支援を名目とした従来の「技能実習」制度を廃止し、外国人労働力の確保を目的とする「育成就労」制度を導入します。
この制度改革により、今後、在留外国人はさらに増加し、在留外国人が増えれば、それにつれて一定の比率で「永住者」の数も増えていくと想定されます。しかし、日本政府は、入管が在留活動や在留期間をコントロールできない「永住者」の増加を好ましく思っていないようです。
「永住者」の資格を求めて、やっとそれを手に入れた人には「永住者」の資格を必要とする相当な理由があるはずです。別の言い方をすれば、日本における安定した生活基盤を必要とする切実な理由が必ずあるのではないでしょうか。今回の法改正は、明らかに永住資格保持者にとって脅威になります。この法改正によって、「永住者」の資格が簡単に取り消されるようなことが起こらないことを願います。
◎「永住許可」要点整理(計2回)はこれで終了します。多少はお役に立てましたでしょうか? これらの投稿を読んでいただいて、何か質問がありましたら、ご遠慮なく連絡してください。思い切って簡略化した内容ですし、問題提起も含んでいますので、きっとご不明な点、もっとお知りになりたい点があるのではないかと思います。
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初回の投稿はこちらから >> 「永住許可」要点整理~その1