1.本来は、任意後見契約の一部ではない。
死後事務委任契約は、任意後見契約の中の一条項として記載することが多いようですが、まず最初に、両者は性質を異にするものだということを押さえておきましょう。
任意後見契約は、本人が生きている間に、任意後見人に、判断能力が衰えた本人に代わって諸手続きをしてもらう契約ですが、死後事務委任契約は、読んで字のごとく、本人が死亡した後の諸手続き(事務)を「誰か」に委任する契約です。
この場合の「誰か」には、多くの場合、自然な流れとして、死の直前まで世話をしてくれた任意後見人がなります。その結果、死後事務委任契約は、任意後見契約の一条項として含まれることが多くなります。
しかし、この「誰か」は、任意後見人でなくてもよく、死後事務委任契約を任意後見契約に含めなくても、もちろん、構いません。死亡に続く相続のことなども考慮し、任意後見人とは別の人、例えば、弁護士や行政書士など専門家や特定の親族に依頼した方がよいと判断することもあるでしょう。その場合は、死後事務委任契約は、任意後見契約とは別個の、独立した契約として公正証書にしておくとよいと思います。
2.遺言とは目的が異なる。
遺言書には、財産に関することだけではなく、例えば、愛犬の世話は誰々に引き継いでもらいたい、といったことを書くのも自由です。しかし、多くの場合、遺言書に書かれることは、財産の相続に関することだと思います。具体的には、家は誰に、土地は誰に、預金は誰に、株は誰に、、、といった具合でしょう。
一方、死後事務委任の対象は、死亡直前直後の出費や諸手続きに限定されます。例えば、死亡直前まで入院していた病院への支払い、賃貸住宅の家賃の清算、遺品の処理、葬儀や埋葬に関する手続きや支払いなどが想定できると思います。
要するに、死後事務委任契約の対象は、死亡後に比較的速やかに処理しなければいけない支払いや手続きです。
3.相続人とのトラブルを避けるために
死亡するまで入院が長期化し何度も手術をしたような場合、病院への支払いは相当な額になるかもしれません。また、葬儀・火葬までは悲しむ間もなく過ぎ去ったとしても、墓所の選定・埋葬には時間を要すると思われます。このような多額の出費や時間がかかる処理に関しては、法定相続人がいる場合、彼ら彼女らと意見が衝突する可能性が出てきます。
相続人とのトラブルを避けるために、第一に心掛けることは、生前に本人とよく相談して、死後に想定される事務をリスト化して目録にし、契約公正証書に別紙として添付しておくことです。
第二に、委任された死後事務はできるだけ短期間に終了させることを心掛けてください。