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退去強制手続きの概要
退去強制手続きは、手続きが進むにつれて、次のステップがどんどん枝分かれしていく、複雑な制度です。退去強制事由に該当するからといって、全ての該当者が収容され強制送還されるわけではありません。監理措置に付されたり、仮放免されるケースもあります。事由によっては、出国命令を受けて、自主的に出国することが認められる場合もあります。
どのような処遇を受けるかは、入国審査官による審査で決められますが、審査の結果に納得できなければ、その上の特別審理官、さらにその上の法務大臣、さらに裁判所に訴えることもできます。
退去強制手続きは、主に次の各項目で構成されています。
1.退去強制の対象となる事由に該当するか否かを調査し認定するプロセス。具体的には、入国警備官による違反調査、入国審査官による違反審査、特別審理官による口頭審理、法務大臣による採決
2.退去強制事由に該当することが疑われる外国人の拘束
3.退去強制事由に該当することが疑われる外国人、または、退去強制事由に該当すると認定された外国人に対する措置。具体的には、収容、仮放免、監理処置
4.在留特別許可
5.収容中の外国人の処遇
6.強制送還の執行
7.上記各段階で発せられる命令や許可について。具体的には、収容令書、退去強制令書、仮放免許可書、管理措置決定通知書、出国命令など
これらの手続きや措置の大部分に対しては、特に収容令書が発付されてからは、弁護士さんに対応してもらう必要があります。
ここでは、行政書士事務所として、予防法務の観点から、どのような場合に、退去強制の対象になってしまうか、具体的な各々の該当事由を学び、個々の外国人が、それらに該当しないように注意できるようになることを目的とします。
入管法第24条とは
入管法(出入国管理及び難民認定法)の第24条は、退去強制事由を事由ごとに合計24個の号に分類して規定しています。いくつかの号は、さらにイロハ・・や(1)、(2)・・の枝番が付いて細分化されていて、とても長く、取っ付きにくい条文です。しかし、とても重要な条文です。
列記されている退去強制事由は、テロリストや人身売買といった遠い世界の深刻な事由から、オーバーステイのように非常に身近な、誰にでも起こり得る事由まで様々です。事の軽重に関係なく、無秩序に並んでいますので、自分に関係しそうな号を見落とさないように注意してください。
この専用ページでは、退去強制事由の各号ごとに、入管法の条文に即して、簡単な日本語を使って説明を試みますが、分かり易く書こうとすればするほど、条文の意味の正確性が失われるのを防ぐことはできません。
このページの目的は、大体のイメージがつかんでもらうことですから、もし自分がどれかに該当するかもしれないと思ったら、その先は、自分で勝手に判断せず、必ず弁護士や行政書士といった専門家に相談してください。
入管法第24条各号(簡約)
1号:不法入国者
2号:不法上陸者
2号の2:偽りその他不正の手段により取得した在留資格を取り消された者
2号の3:許可された在留資格が規定する活動を行っていないために在留資格を取り消された者で、逃亡のおそれがある者
2号の4:在留資格が取り消され、自主的に出国できる期間が付与されたにもかかわらず、その期間内に出国しなかった者(不法残留者)
3号:他の外国人に在留資格認定証明書(COE)、上陸許可の証印、在留資格又は在留特別許可を不正に取得させる目的で、査証(ビザ)その他の文書等を偽造・変造し、又は、そのように偽造・変造された文書等を使用し、所持し、提供し、人に使わせ、そうすることをそそのかしたり助けた者
3号の2:テロリスト及びテロの準備やテロを助ける行為をした者、するおそれのある者
3号の3:国際約束により日本への入国を防止すべき者
3号の4:外国人の不法就労に関して、次のいずれかの行為を行い、又は、そそのかしたり助けた者
イ. 外国人に不法就労をさせること
ロ. 不法就労をさせるために外国人を自分の支配下に置くこと
ハ. 上記イ又はロの斡旋をすること
3号の5:在留カードや特別永住者証明書(以下、在留カード等という)の偽造・変造に関して、次のいずれかの行為を行い、又は、そそのかしたり助けた者
イ. 行使の目的で、又は事務処理を誤らせる目的で、在留カード等を偽造・変造し、提供し、受け取り、所持し、又は保管すること
ロ. 他人名義の在留カード等を提供し、受け取り、又は所持すること、自分の在留カード等を提供すること
ハ. 偽造・変造された在留カード等を使用し、もしくは、人に使わせること、他人名義の在留カード等を使用すること
ニ. 在留カード等を偽造・変造するための器械や原材料を準備すること
ホ. 偽造・変造のため在留カード等の電磁的記録情報を取得し、提供し、又は不正に取得された情報を保管すること
4号:日本に在留する外国人で次のイからヨに該当する者
イ. 許可を受けないで収入を伴う資格外活動をもっぱら行っていることが明らかな者
ロ. 許可された在留期間を経過して日本に残留する者(不法残留者)
ハ. 人身取引を行い、そそのかし、又は助けた者
ニ. 旅券法違反(虚偽を記載した申請によって作られたパスポートや他人名義のパスポートを使用したなど)により刑に処せられた者
ホ. 集団密航者を日本に上陸させ、不法入国を助け、又は退去強制を免れさせる行為をしたことにより刑に処せられた者
へ. 許可を受けないで収入を伴う資格外活動を行い拘禁刑に処せられた者
ト. 少年法に規定する少年で、三年を超える拘禁刑に処せられた者
チ. 麻薬関連で有罪の判決を受けた者
リ. 上記ニからチまでに掲げる者のほか、無期又は一年を超える拘禁刑を受けた者、ただし、刑の全部の執行猶予を受けた者、刑の一部の執行猶予を受け、猶予されなかった期間が一年以下の者は除く。
ヌ. 売春あるいは売春に直接関係がある業務に従事する者
ル. 他の外国人が不法に入国、又は上陸することをそそのかし又は助ける者
オ. 日本国憲法又は日本国政府を暴力で破壊することを企て、主張し、もしくはそのような政党や団体を結成し、又はそれに加入する者
ワ. 公務員の殺傷、公共施設の破壊、工場等の安全な操業を脅かす争議行為などを主張する政党や団体を結成し、又はそれに加入する者
カ. 上記オ又はワに規定する政党や団体のために、印刷物を作成し、配布し、又は展示する者
ヨ. 上記イからカまでに掲げる者のほか、法務大臣が日本の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者
4号の2:就労又は収入を伴わない活動のための在留資格も持って在留している外国人で、刑法に規定される住居侵入、通貨偽造、文書偽造、有価証券偽造、クレジットカード偽造、印章偽造、賭博、殺人、傷害、監禁、誘拐、人身売買、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、盗品に関する罪、又は刑法の特別法に規定される集団的な暴力、常習窃盗犯、特殊開錠用具所持、危険運転致死傷罪、特定の金属切断工具の隠匿携帯に関する罪により拘禁刑に処せられた者
4号の3:フーリガン
4号の4:中長期在留者で、住居地に関して虚偽の届出をし、又、在留カードを受領せず、携行せず、もしくは提示を拒んで拘禁刑に処せられた者
5号:仮上陸の許可を受けた者で、住居及び行動範囲の制限に違反して逃亡し、又は呼出しに応じない者
5号の2:退去強制事由に該当するとの認定が確定したにもかかわらず、遅滞なく日本から退去しない者
6号:船の寄港地で上陸、船が遭難し救助されて上陸、緊急上陸、一時的庇護を求めて上陸した等の場合に、許可された在留期間を経過して残留する者(不法残留者)
6号の2:船舶観光上陸の許可を受けた者で、その船が出港するまでに帰船せず逃亡した者(不法在留者)
6号の3:船舶観光上陸の許可を取り消された者で、指定された期間内に出国しない者(不法在留者)
6号の4:上陸許可を取り消された船舶又は航空機の乗員であって、指定された期間内に出国しない者(不法在留者)
7号:日本の国籍を離脱した者、又は、日本で出生した外国人であって、在留資格を取得しないまま60日を越えて残留する者(不法残留者)
8号:出国命令を受けた者であって、指定された出国期限を超過して日本に残留する者
9号:出国命令を取り消された者
10号:難民認定又は補完的保護対象者の認定を取り消された者
出国命令制度とは
退去強制事由に該当する人のうち、不法残留者(いわゆるオーバーステイをしている外国人)は、出国命令を受けて、自主的に国外へ退去できる場合があります。
出国命令の対象になり得る不法残留者とは、入管法第24条第2号の4、第4号ロ、第6号から7号までのいずれかの事由に該当する人たちです。
ただし、出国命令を受けるには、ただ単に、これらの号に該当するだけでは充分ではありません。その他に満たさなければならない要件がいくつかあり、それらは第24条の3に規定されています。
第24条の3:出国命令対象者の要件
1号:次のイかロのいずれかに該当する者
イ. 入国警備官が違反調査を開始する前に、自ら入管に出頭する(自首する)こと。
ロ. 違反調査が開始された後であっても、退去強制事由に該当すると認定されてしまう前に、自主的に出国したい旨を表明すること
2号:不法残留以外の退去強制事由に該当していないこと
3号:刑法又は刑法の特別法が規定する特定の犯罪(第24条4号の2に規定する犯罪と同じ)により拘禁刑に処せられたことが無いこと
4号:過去に退去強制処分や出国命令による出国をしたことが無いこと
5号:済やかに日本から出国することが、確実に見込まれること
本来、退去強制事由に該当すると認定されたら、全員が収容され、強制送還されることに決まっています。しかし、全員を収容し強制送還することは、入管としても大変な手間なので、もともとは正規の在留許可を受けて在留していた不法残留者に限って、自首すれば罰を軽くしてあげますよ、という制度です。
従って、不法入国者、不法上陸者、不法在留者は、第24条の3が規定する出国命令対象者にはなりません。
出国命令を受けて自主的に出国すると、上記1号イに該当し、2号から5号までの要件を全て満たす者は、上陸拒否期間が1年で済む、つまり、出国の日から1年後に再入国できるようになります。
自首したら、1年後には帰って来れますよ、という甘い言葉で誘っているわけですが、実際に再び中長期在留者として戻ってくるためには、在留資格認定証明書の交付を受けなければなりません。そして、その審査は、不法残留をしたことがない人と同じように進まないかもしれません。この点、忘れないようにしてください。
一方、上記1号ロに該当した場合は、2号から5号までの要件を全て満たしても、上陸拒否期間は5年になってしまいます。尻に火がついてから自首しても遅い、というわけです。くれぐれも注意してください。