家事関係 >扶養契約
1.親の扶養は、子の義務
民法は、第877条から第881条までに親族間の扶養義務に関する規定を置いています。対象は、基本的には、本人を起点に直系血族(祖父母、父母、子、孫の縦のライン)及び兄弟姉妹(横のライン)です。ただし、直系血族や兄弟姉妹によっては、十分な扶養が提供できない場合、家庭裁判所は、三親等内の親族に扶養義務を負わせることができます。
高齢者が生活に困窮した場合、社会福祉制度の利用、具体的には、生活保護の適用や養護老人ホームへの入所措置などが考えられます。親子の仲が悪く、老親が困窮しても子は知らんぷり、税金を払っているんだから行政に面倒を見てもらえ、と考える人もいるかもしれません。
しかし、法は公的支援の前に、親族間の扶養を義務付けていることを忘れないでください。老親が生活保護を受けたり、養護老人ホームに入所した場合、生活保護法や老人福祉法は、費用の全部又は一部を扶養義務者の親族に請求できると規定しています。
扶養を受ける権利を有する人を扶養権利者といい、扶養権利者に扶養を提供する義務を有する人を扶養義務者といいます。扶養義務者の範囲は、上述のとおり、直系血族(ほとんど場合、子)と兄弟姉妹ですが、兄弟姉妹より子が先順位(先に義務を果たすべき人)になります。
2.子が複数いる場合の費用・役割分担
民法は、扶養義務者の範囲については、直系血族と兄弟姉妹であると明記していますが、誰が、いくら、どのように扶養の義務を果たすかについては、何も指針を置いていません。
扶養義務者間で協議し、それぞれの状況や経済力に応じて応分の負担をし、扶養権利者を含む全員が納得できるように決めたらよいわけです。一旦、決まったら、契約書を作成し、更には公正証書化しておくと、あとで、言った言わないのトラブルを防ぐことができるでしょう。
当事者間で協議し合意に至るが理想ですが、協議が調わない場合は、家庭裁判所が定めることになります。
扶養義務の負担方法についても、当事者間の協議で決めることができます。方法には、「給付扶養」と「引取り扶養」の二種類があります。前者は金銭や生活・医療物資等の供給又は定期的な病院への送迎などサービスの提供、後者は老親を自宅に引き取って生活を共にしながら世話をすることです。
誰に給付をするかも、当事者間で決めて差し支えありません。老親の頭がしっかりしていれば、遠方に住む子Aは、老親の口座に毎月送金して給付することができますし、老親が他の子Bと同居していれば、AはBに毎月送金して給付することもできます。
3.どの程度の扶養を提供しなければならないか
ここまでの説明で、誰が、どのように扶養義務を果たさなければならないかは分かりましたが、ではどの程度(いくらくらい)の扶養を提供する義務があるのでしょうか。
民法の扶養には、二つの基準があります。ひとつは、「生活保持義務」といって、自分と同等の生活水準を提供する義務です。もう一つは、「生活扶助義務」といい、自分と同等である必要は無く、最低限とはいわずとも、質素な暮らしが出来れば十分の水準を提供する義務です。
離婚のページで説明していますが、子の養育は「生活保持義務」です。一方、どうも腑に落ちないですが、老親の扶養は「生活扶助義務」であれば足ります。どうしてこの違いが生じるのか、是非考えてみてください。
4.強制執行認諾条項
複数の子の間で、それぞれ何を、どれくらい、どういう方法で給付するか合意しても、その取決めが守られなければ意味がありません。取決めに強制力を持たせるためには、公正証書化し強制執行認諾条項を入れておくと、子Aが取決めを守らない場合、Aの兄弟姉妹である子BやCは、訴訟を起こさなくても、Aに対する強制執行を請求できます。
例えば、Aが取決められた給付を怠った場合、民事執行法の規定(第151条の2第1項四号、第152条第3項)により、最大でAの給料の1/2を継続的に差し押さえることができます。
親子、兄弟姉妹間で結ぶ扶養契約公正証書に、強制執行の条項を入れるのは、どうも気が引ける感じもしますが、兄弟は他人の始まりともいうことですから、契約は契約と割り切って、将来のトラブルの種を取り除いておきましょう。