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在留資格取消しの法定事由を正しく理解すること
在留資格(ビザ)申請のページにも書きましたとおり、2025年以降、在留資格の更新に際して、不安を覚える在留外国人は増えていると思われます。
その理由として、「経営・管理」や「技術・人文知識・国際業務」(技人国)などの在留資格で、取得・更新の要件が厳格化されたこと、外国人に冷たい世論を背景に、在留資格変更申請や在留期間更新申請において、外国人の不利益になる方向に、法務大臣の裁量が行使されるケースが、増えそうなことが挙げれます。
更新が許可されないかもしれないという不安に、理性的に対処するには、まず第一に、どのような場合に在留資格が取り消されるかについて、入管法の規定に沿って、正しい理解を持つことです。
このページでは、入管法が列記している10個の在留資格取消し事由を一つずつ見ていきます。そして、10個なかでも、特に、日本で善良な市民生活を送っている外国人が、自分でコントロールできない事情や思いがけない事故、過失によって該当してしまうかもしれない事由について、事例を挙げて解説していきます。
また、在留資格の取消しは、退去強制(強制送還)や出国命令(退去強制される前に自主的に出国すること)、上陸拒否(再入国の禁止を含む)とも密接に関連します。これらの項目については、退去強制、出国命令、上陸拒否のページで説明します。
在留資格の取消し(入管法第22条の4)
在留資格の取消しに関する入管法(出入国管理及び難民認定法)の主要な条文は、第22条の4です。
入管法の特徴として(多くの他の法律も同じですが)、条文の書き方が、入れ子構造(マトリョーシカ人形の構造)になっており、「・・第〇〇条に該当する・・」と書かれていて、第〇〇条を見ると、そこには「・・第△△条に規定する・・」などと書かれており、最後までたどり着いたときには、元の条文は何の条文だったのか覚えていないというような、笑うに笑えないことが、よく起こります。
ここでは、できる限り、入れ子状態を解消して、また、できるだけ日常用語を使用して、第22条の4を解説します。
この条文に列記されている10個の取消し事由
第1項1号:偽りその他不正の手段により、第5条第1項各号*のいずれにも該当しないとして、在留許可を受けたこと。
*第5条第1項各号の概要:感染症患者、判断能力が不十分な者であって補助する者がいない場合、経済的に国や地方公共団体の負担になる者、日本又は外国で一年以上の拘禁刑に処せられた者、麻薬に関連して日本又は外国で刑に処せられた者、フーリガン、麻薬を不法に所持する者、売春に関係する者、人身取引に関係する者、銃や刀剣を不法に所持する者、退去強制又は出国命令を受けて出国した者であって所定の入国禁止期間が経過していない者、出国中に拘禁刑が確定した犯罪者であって刑の確定から5年を経過していない者、テロリスト、以上のほかに法務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると考える者
第1項2号:前号(第5条第1項各号の上陸拒否事由があるにも拘わらず、無いと偽ったこと)以外の、偽りその他不正の手段により、在留許可を受けたこと。
第1項3号:第1項1号及び2号以外の場合で、不実の記載又は記録のある文書を提出して、在留許可を受けたこと。
>>この号には、「偽りその他不正の手段により」と書かれていません。従って、だまされて、あるいは過失によって真実と異なる記載をした文書を提出した場合も、この号に該当します。
第1項4号:偽りその他不正の手段により、在留特別許可を受けたこと。
第1項5号:活動類型に基づく在留資格を持って在留する者が、持っている在留資格が規定する活動を行わず、他の活動を行っている、あるいは行おうとしていること。ただし、正当な理由がある場合を除く。
第1項6号:活動類型に基づく在留資格を持って在留する者が、持っている在留資格が規定する活動を、継続して3か月以上行わないで在留していること。ただし、正当な理由がある場合を除く。
第1項7号:日本人の配偶者または永住者の配偶者が、配偶者としての活動を6か月以上行わないで在留していること。ただし、正当な理由がある場合を除く。
第1項8号**:適法に中長期在留者となった者が、入国を許可された日から90日以内に市区町村役場に住所の届出をしないこと。ただし、正当な理由がある場合を除く。
第1項9号**:中長期在留者が転居した場合、転居から90日以内に、転居先の市区町村役場に住所の届出をしないこと。ただし、正当な理由がある場合を除く。
第1項10号**:中長期在留者が、虚偽の住所の届出をしたこと。
**2027年(令和9年)4月1日に施行される改定入管法において、8号は10号に、9号は11号に、10号は12号になります。現在(2026年)の8号と9号は、永住資格の取消し事由に充てられることになります。永住資格の取消し事由については、後述します。
これら10個の事由のうち、特に身近なもの、普段は法令を守って善良な市民生活を送っている外国人にも起こり得る事由は、5号から9号でしょう。これらの各号に共通している点は、いずれも「正当な理由がある場合を除く。」という但し書きが付いていることです。このことに留意しながら、以下、各号について、少し詳しく見ていきます。
第1項5号:活動類型に基づく在留資格を持って在留する者が、持っている在留資格が規定する活動を行わず、他の活動を行っている、あるいは行おうとしていること。ただし、正当な理由がある場合を除く。
>>例えば、在留資格「留学」を許可されて来日したのに、学業は諦めてしまって、あるいは、元から勉強をするつもりなど全くなく、休学あるは退学して、専ら就労している場合が、この号に該当します。
しかし、勤めていた会社が倒産し、その会社で働くために取得した在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国)に見合った仕事が直ぐに見つからず、再就職活動(5号が規定する「他の活動」に当たる)を行っていた場合は、正当な理由があると認められる可能性があります。
第1項6号:活動類型に基づく在留資格を持って在留する者が、持っている在留資格が規定する活動を、継続して3か月以上行わないで在留していること。ただし、正当な理由がある場合を除く。
>>例えば、在留資格「教育」を許可されて、高校の語学教師になったものの、生徒が嫌いだからという理由で、勝手に3ケ月以上休職した場合は、この号に該当します。
しかし、過労で休職を余儀なくされたような場合は、診断書があれば、正当な理由があると認められる可能性があります。
第1項7号:日本人の配偶者または永住者の配偶者が、配偶者としての活動を6か月以上行わないで在留していること。ただし、正当な理由がある場合を除く。
>>離婚や死別した場合、6ケ月以内に他の在留資格に変更しないと、この号に該当して在留資格を取消されてしまう可能性があります。しかし、第22条の5は、この号(第22条の4第1項7号)に該当し在留資格を取消そうとする場合であっても、法務大臣は、その外国人に、在留資格変更申請や永住許可申請の機会を与えるよう配慮しなければならない、と規定しています。
この場合に、在留資格変更申請によって新たに取得できる在留資格としては、「技術・人文知識・国際業務」(技人国)などの就労系在留資格のほか、「定住者(告示外)」(離婚・死別・婚姻破綻)が考えられます。
また、離婚や死別はしていないけれども、別居している場合は、配偶者として正当な活動をしていないこと(民法第752条の同居義務違反)になりますが、例えば、離婚訴訟中やDV被害から逃れるための別居であれば、正当な理由として認められる可能性があります。
第1項8号:適法に中長期在留者となった者が、入国を許可された日から90日以内に市区町村役場に住所の届出をしないこと。ただし、正当な理由がある場合を除く。
第1項9号:中長期在留者が転居した場合、転居から90日以内に、転居先の市区町村役場に住所の届出をしないこと。ただし、正当な理由がある場合を除く。
>>8号と9号に関しては、善良な市民として、新しい住所が決まったら速やかに市区町村役場に届けることは、常識として理解できるでしょう。
しかし、初めて日本に来て、自分の生活習慣に合った住居がなかなか見つからず、ホテル住まいを続けているうちに、2ケ月以上経ってしまい、やっと住居を決めた途端に、病気になって入院してしまい、90日の期限を過ぎてしまったというようなこともあるかもしれません。このような場合は、後日、在留期間更新のときに問題にならないよう、速やかに書面により事情を入管に説明してください。
意見の聴取、通知方法
第2項:法務大臣は、第1項各号に規定する理由により、在留資格を取消すときは、入国審査官(入管庁の係官)に命じて、その外国人の意見を聴取させなければならない。
第3項:前項の意見聴取は、日時、場所及び取消しの理由を、原則として書面により、事前に、その外国人に通知しなければならない。
第4項:その外国人および代理人(弁護士)は、期日に出頭して、意見を述べ、証拠を提出することができる。
第5項:その外国人が意見聴取に応じないときは、意見聴取を行わずに、在留資格を取消すことができる。
第6項:在留資格の取消しは、通知書を郵送して行わなければならない。
自主的に出国できる期間の付与
第7項:在留資格の取消し事由が、第1項3号から10号のいずれかに該当する場合、法務大臣は、その外国人が自主的に出国できる期間(30日以内)を指定する。ただし、第1項5号に該当する場合で、その外国人が逃亡するおそれがある場合は、自主的に出国できる期間を付与しない。
>>つまり、在留資格の取消し事由が、第1項1号または2号に該当する場合、もしくは5号に該当し逃亡する恐れがある場合は、自主的に出国できる期間を付与されることなく、直ちに退去強制処分を受けることになります。
第8項:法務大臣は、前項の規定により出国猶予期間を指定する場合は、その外国人に対し、住居及び行動範囲の制限その他必要と認める条件を付することができる。
第9項:法務大臣は、第6項に規定する通知書に、第7項で指定する期間及び第8項で付する条件を記載しなければならない。
永住者の在留資格の取消しに関する入管法改定
2027年(令和9年)4月1日に施行される改定入管法に、「故意に公租公課の支払いをしない」などの場合に、永住資格が取り消される規定が追加されました。永住許可申請のページでも説明していますが、以下に、条文ごとに整理してみます。
※以下の条文番号は、2027年(令和9年)4月1日に施行される改定入管法の条文番号です。
第22条の4(在留資格の取消し)
第1項8号:永住者が、この法律(入管法)に規定する義務を遵守せず、又は故意に公租公課の支払をしないこと。
>>ここでいうところの、「この法律(入管法)に規定する義務」とは、具体的には、在留カードの不携行などのことだそうです。
第1項9号:永住者が、住居侵入、文書等の偽造、賭博、殺人、傷害、監禁、誘拐、人身売買、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、盗品の譲り受け、危険運転致死傷などの罪により拘禁刑に処せられたこと。
第22条の6
第1項:法務大臣は、第22条の4第1項8号又は9号に掲げる事実が判明したことにより、在留資格の取消しをしようとする場合には、その外国人が引き続き日本に在留することが適当でないと認める場合を除き、職権で(法務大臣の裁量で)、永住者の在留資格以外の在留資格への変更を許可するものとする。
>>つまり、新たに創設された永住資格取消し要件に該当し、永住資格を取消す場合、いきなり、日本から追い出すのではなく、期限のある通常の在留資格、例えば、就労系であれば「技術・人文知識・国際業務」(技人国)、身分系であれば「日本人の配偶者等」などへ変更することを認める、という意味です。
第2項:前項の許可の通知及び手続きについての規定。