「経産省のスタートアップビザ」と「特区スタートアップビザ」の違い
前回の投稿では、経済産業省が創設した「外国人起業活動促進事業」を「経産省のスタートアップビザ」と呼び、内閣府による国家戦略特別区域に関する制度「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」を「特区スタートアップビザ」と呼ぶことにしました。
それぞれの「スタートアップビザ」制度の骨子や申請先、受けられる優遇措置などについては、前回の投稿「「スタートアップビザ」超入門~その1」の解説を参照してください。
今回は、これら二つの「スタートアップビザ」の主な違いを説明します。
(1) 地方自治体によって実施している「スタートアップビザ」が違う
例えば、東京都は「特区スタートアップビザ」のみを実施していて、「経産省のスタートアップビザ」は実施していません。一方、東京都渋谷区は「経産省のスタートアップビザ」の方を実施しています。京都府や兵庫県、福岡市などは、両方とも実施しています。
(2) 起業準備のための猶予期間の違い
「経産省のスタートアップビザ」は1年、「特区スタートアップビザ」は6か月です。
(3) 「経産省のスタートアップビザ」の特例
「経産省のスタートアップビザ」を利用した結果、1年でスタートアップできないときは、引き続き「特区スタートアップビザ」を利用して猶予期間を延ばすことができます。しかし、その逆はできません。
(4) それぞれの認定件数(2023年3月末までの累計)
「経産省のスタートアップビザ」は86件、「特区スタートアップビザ」は386件。後者の386件のうち、東京都が236件、福岡市が82件、愛知県が43件で、これらの3自治体でほとんどを占めています。
「経産省のスタートアップビザ」と「特区スタートアップビザ」とで認定件数が大きく異なっているのは、認定されるためのハードルの高さが違うというより、東京都がどちらに入っているかによるようです。
(5) 自治体によって、支援対象となるスタートアップ事業が違う
ほとんどの自治体は、支援対象となる事業を限定的に列挙しています。しがたって、どんな事業でも認めてもらえるわけではありません。概してどの自治体も、ITやライフサイエンス、観光など科学技術の発展や地域の活性化に資するスタートアップは歓迎しています。
一方で、仙台市は防災対策関連事業を支援対象のひとつに挙げています。また、浜松市は次世代輸送用機器を支援対象に挙げています。これらの例のように、その自治体が重要と考えていること=外国人起業家に期待すること、として具体的に示しているケースもあります。
自分がかつて住んだことがあったり、卒業した大学がある県や市での起業を考えるのが自然でしょう。しかし、自分の事業を一番歓迎してくれるのは、どの地方自治体かという観点から起業する場所を考えることも大切です。
(6) 地方自治体へ提出する申請書類
主なものは次のとおりです。
「経産省のスタートアップビザ」:起業準備活動計画申請書、起業準備活動計画書、履歴書など
「特区スタートアップビザ」:創業活動確認申請書(兼同意書)、創業活動計画書、履歴書など
上記に加えて、両方の「スタートアップビザ」とも、事業を軌道に乗せるための方策や資金調達の方法に関する補足説明資料など、事業としての実現可能性、将来性、成長性などを積極的にアピールする資料も用意すべきでしょう。
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◎次回の投稿では、スタートアップ制度を利用して起業した外国人が取得することになる、在留資格「経営・管理」について見ていきたいと思います。
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